アメーバ経営とは?成功確率アップの方法や失敗もあり得る現実を解説
「アメーバ経営を詳しく知って、有効そうなら自社に取り入れたい」「リスクの詳細や成功確率を高める方法を知りたい」などと考えていないでしょうか?
アメーバ経営は多くの企業で取り入れられており、特徴があるだけにメリット・デメリットが明確にあります。そして、多くの導入実績から効果の詳細やデメリットの解決方法などもわかってきているのが実情です。
そこで今回、アメーバ経営とは何かという基本から、メリット・デメリット、デメリットの解決方法などをまとめて解説していきます。
アメーバ経営の概要と目的
経営手法として有名なアメーバ経営ですが、概要や目的をあらためて理解しておくのは重要です。「とりあえず組織を小さく分けて経営すればよい」といった表面的な理解ではメリットを得られず、デメリットばかりが出てしまうからです。そこで、アメーバ経営の概要と目的をわかりやすく解説していきます。
アメーバ経営とは?
アメーバ経営は、大手電子部品・電子機器メーカーである京セラを創設した稲盛和夫氏が実践して成果を出してきた経営手法です。2017年の時点で749社に導入されているとされており、2010年に経営破綻した日本航空の再建にも活用されました。
最大の特徴は、自社を10人未満の小さな組織(アメーバ)の集合体にして日々の経営をしていくことです。元々は、拡大して全ての部門を把握できなくなった稲盛氏が「中小企業の集合体、つまり独立採算制の組織がたくさんあるイメージで経営しよう」という発想で始めたとされます。アメーバに分ける以外にも大きな特徴が3つあり、具体的には以下のとおりです。
- 各アメーバは独立採算制
- 採算は時間あたりで算出
- 採算はリアルタイムで開示
それぞれ具体的に解説していきましょう。
各アメーバは独立採算制
各アメーバは独立採算制で収支を集計します。アメーバ経営でも部門は構築されますが、部門ごとに収益を集計するのではなく、アメーバ単位での成果を見るというわけです。各社員が、自社内での役割や責任を意識しやすくなり、後述する人材育成や収益最大化などのメリットが得られます。
採算は時間あたりで算出
採算を時間あたりで算出するのもアメーバ経営の特徴です。時間あたりの付加価値を見ることで、アメーバの規模に関わらず収益性を確認できます。日々の業務の改善結果がわかりやすくもなるので、アメーバの利益拡大にもつながります。
アメーバ経営をする目的は3つ
アメーバ経営をする目的は以下の3つになります。
- 全社員を経営に参加させる
- 全社員に経営者意識を持たせる
- 市場の変化に対応できる組織にする
全社員を経営に参加させる
各社員が漫然と業務をするのを防止し、自社のビジョンやミッション達成のために自分が何をすべきかを日々考えて働いてもらうのがアメーバ経営の目的の1つです。全社員が経営に参加する意識を持つことで、価値観を共有した上での一体感やスムーズなコミュニケーションができます。
全社員に経営者意識を持たせる
経営の目的は利益の拡大であり、アメーバに独立採算制を導入することで各社員に売上アップやコストカットの意識を持ってもらえます。各アメーバの経営計画の立案と管理などをとおして、経営者意識を持った社員を量産可能です。
市場の変化に対応できる組織にする
市場の変化に即応できる組織にするのもアメーバ経営の目的です。市場は常に変化しており、当事者意識を持った小集団ならすばやい意思決定と行動ができます。各アメーバが利益を追求し続けることで、自社全体の成長につながります。
アメーバ経営のメリット
アメーバ経営を実践することで得られるメリットは、以下の3つが代表的です。
- 収益拡大を前提した企業活動の実現
- 幹部候補の量産
- 早期の課題解決
各メリットの詳細を解説していきます。
収益拡大を前提した企業活動の実現
各アメーバに独立採算制を導入し、リアルタイムで収益の算出と共有をするため、全社員が収益を意識して日々の業務をおこないます。言いかえれば、人件費というコストで得られるリターンの最大化を目指せ、収益の拡大を前提とした企業活動を実現できます。
幹部候補の量産
自社にアメーバという小さな組織を量産して独立採算制で運営してもらうため、経営能力に長けた幹部候補を量産できます。より優秀な経営陣にしていけるのはもちろん、次世代の経営陣候補がいないという状況も防げるでしょう。
早期の課題解決
収益の悪化や市場への対応遅れといった課題を早期に解決していけるのもアメーバ経営のメリットです。数十人から数百人も在籍している部門の場合、課題の共有や意思決定に時間がかかりますが、アメーバの場合は即応を目指せます。また、当事者意識を持って行動してもらえるので、課題の早期解決にも期待できます。
アメーバ経営のデメリット
経営手法にはメリットだけでなくデメリットもあり、アメーバ経営も例外ではありません。具体的なアメーバ経営のデメリットは、以下の3つです。
- 独立採算制導入などの手間や管理工数の多さ
- セクショナリズムが生じる可能性
- ERPなどとの不整合
それぞれ具体的に解説していきましょう。
独立採算制導入などの手間や管理工数の多さ
アメーバ経営をするには、アメーバを作ったり独立採算制を導入したりする手間がかかります。リアルタイムで情報を共有できるシステムをきちんと構築しておかないと、管理工数が極端に多くなってしまい、アメーバ経営が破綻する恐れもあるでしょう。後で詳しく解説するデメリットの解消方法を実践する必要があります。
セクショナリズムが生じる可能性
自社を細かく分け、さらに独立採算にすることから、つながりが薄れたりセクショナリズムが発生したりする可能性があります。スムーズな連携が取れなくなったり、争いに発展したりしてしまうと収益が落ちてしまいます。もっとも、セクショナリズムは解決可能です。詳しくは以下の記事をご覧ください。
リモートワークでセクショナリズムが悪化?根本的な解決法を解説
ERPなどとの不整合
アメーバという形で自社を細かく分けて独自に運用させるということは、独自のやり方や方針が数多くできるということでもあります。全社一律の方法がとられていない以上、ERPなどを導入して生産性を大きく上げるのは難しい場合もあるでしょう。
前もって全社一斉に何かをする可能性があることを伝えておいたり、スムーズな連絡と行動が取れる体制を構築しておいたりする必要があります。
デメリットを解消して成功確率を上げる方法
アメーバ経営にデメリットがあるのは事実ですが、デメリットを解消して成功確率を上げる方法があるのも事実です。具体的な方法として、以下3つを紹介していきます。
- 導入時に経営理念の確立と浸透を徹底
- モチベーション維持の体制構築
- プロセス・タスクマイニングツールの導入
導入時に経営理念の確立と浸透を徹底
アメーバという小さな組織に分けた上で、企業という集合体のミッションを達成していくには、事前に経営理念の確立と浸透を徹底しておくのが重要です。経営理念にそった行動で利益を拡大する活動を各アメーバが取れれば、アメーバ経営は成功といえます。経営理念、ひいては企業あってのアメーバという考えが浸透していれば、必要性の説明とともにERPなどを全社的に導入するのも可能になってきます。
モチベーション維持の体制構築
モチベーションを維持できる体制を構築しておくのもデメリット解消法の1つです。アメーバ経営に限りませんが、モチベーションの有無で同じ人材でもパフォーマンスが大きく異なり、他者との協働にも差が出てきます。
アメーバ経営を実践すると、各アメーバの収益が明確になり、比較やインセンティブでの動機づけを自然と考えてしまいがちです。しかし、各アメーバの成長を評価したりプロセスを評価したりといった絶対的な評価による動機づけも必要です。そうでなければ、研究開発や倉庫といったコストセンターとなる部門でのアメーバ経営がうまくいかなくなってしまいます。したがって、アメーバの特性に合わせたモチベーション維持ができる体制を構築しておくのが重要です。
プロセス・タスクマイニングツールの導入
「プロセスマイニングツール」や「タスクマイニングツール」を導入するのも効果的です。プロセス・タスクマイニングツールとは、業務フローを見える化や改善提案などをしてくれるツールです。全アメーバにしてほしいことが徹底されているかといった確認がしやすくなります。また、特定のアメーバでうまくいっている方法や改善方法を広げることも可能なので、アメーバ経営と特に相性が良いと考えられます。プロセス・タスクマイニングツールについて詳しくは、以下の記事をご覧ください。
まとめ
アメーバ経営は多くの企業で実践されており、京セラという成功企業の原動力になってきた経営手法です。収益拡大を前提した企業活動や幹部候補の量産などのメリットが多くあるので、創始者の稲盛氏のように組織の全容がわからず、収益が伸び悩んでいるなら導入してみてください。
ただし、デメリットもあることに注意が必要です。経営理念の浸透やプロセス・タスクマイニングツールの導入といったデメリット対策は必須になります。ハートコア株式会社では実績豊富なプロセスマイニングツール(myInvenio)やテレワークにも効果的なタスクマイニングツール(myInvenio)を提供しているので、ぜひお問い合わせください。
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