タスクマイニングとは? - RPA化推進に効果的な分析手法
タスクマイニングは、様々な業務に従事するスタッフの個々のPC操作、すなわち、「アプリ起動」「画面立ち上げ」「ファイルオープン」「マウスクリック」「テキスト入力」「コピー&ペースト」などの詳細なPC操作ログデータを分析することにより、"タスク”レベルでの課題・問題点(非効率な業務や、ボトルネック、繰り返し業務等)を発見する分析手法です。
タスクマイニングにより、例えば、紙の書類をOCRで読み取ってデジタルデータ化する一連の作業が想定よりも時間がかかっている(非効率業務)や、メール本文からExcelへのコピー&ペースの作業が高い頻度で繰り返されている(繰り返し業務)といったタスクレベルの課題を浮き彫りにできます。
なお、「タスクマイニング」は、米ITアドバイザリ企業Gartnerが、『Gartner, Market Guide for Process Mining, Marc Kerremans, 17 Jun 2019』において初めて提唱した表現です。
タスクマイニングのメリット
タスクマイニングのメリットは、個々のスタッフのPCで行う各種作業、すなわちタスクに関わる課題・問題点を実際の所要時間や処理件数などのファクトに基づいて指摘できることです。
従来のヒアリングによる業務分析では、作業者本人の主観的、感覚的な情報(このタスクにはだいたい5分くらいかかってますかねぇ・・・など)しか得ることができず、分析結果の正確性、信頼性は必ずしも高いものではありませんでした。
また、ストップウオッチを持った調査員による現場での計測作業は、手間とコストがかかるだけでなく、計測対象の作業者の業務自体に悪影響を与える可能性がありました。
一方、タスクマイニングの場合、各PCにインストールされたセンサー(エージェント)を通じて、自動的に収集されたPC操作ログを分析対象とすることから、ありのままのファクト(事実)に基づく作業の流れを再現できます。したがって、分析結果は極めて正確で信頼性の高いものとなります。しかも、現場の担当者に負担をかけることがありません。
以上、従来の業務分析手法と比較してのタスクマイニングのメリットをまとめると以下の2点となります。
・業務の詳細データを収集する手間、コストが大幅に削減可能である
・ファクトベースのため、正確性、信頼性の高い分析結果を得られる
タスクマイニングの期待成果
前述したように、タスクマイニングは、個々のPC操作により遂行される作業に関わるミクロな分析を通じて、タスクレベルの課題・問題点を発見することですが、その結果として期待できる成果は、RPA化、すなわちロボットによるタスク自動化を行うべき業務が洗い出せることです。
現在、様々な企業でRPAの導入が進んでおり、すでに本格普及期に入ったと言える状況ですが、本格普及期ならではの悩みを抱える企業が増えています。
例えば、とりあえず導入しやすいタスクからRPA化を行って自動化の効果は検証できたが、そもそも、それはRPA化すべき業務だったのだろうかわからない、またRPAの本格展開に当たっては優先順位をつけて取り組んでいきたいが、RPA化すべき業務はどこなのか、どの業務が最優先でRPA化に取り組むべきかがわからない、といった悩みです。
これは、企業の業務改革担当者の皆さまは、まず企業全体の視点で業務の棚卸を行い、業務プロセスそのものを見直し、その上でRPA化候補の業務を洗い出して優先順位をつけつつ、RPA化に取り組むことが本来のあるべき手順だということに、気付き始めているということです。
そして、RPA化候補の業務を洗い出すためには、「タスク自動化」の前にまず「タスク可視化」を行う必要があります。このニーズに対するソリューションが「タスクマイニング」です。
タスクマイニングとプロセスマイニングの違い
タスクマイニングは、前述したように個々のPC操作ログに基づく、タスクレベルのデータを分析します。具体的には、「エクセルのファイルを立ち上げた」、「セルに文字を入力した」、「メールを送信した」、など、Officeソフト、メールソフト等の操作データが分析対象です。ちなみに、こうした詳細な操作のことを「アトミック・アクティビティ(原子的活動)」と呼びます。これ以上分割できない最小単位の活動という意味です。
一方、プロセスマイニングは、ERPやCRMなどの業務システムの操作を記録したもの、すなわち「イベントログ」が分析対象です。イベントログの場合、記録されるデータは、「見積書作成」「見積書承認」「発注」といった業務の節目となるアクティビティ(=イベント)になります。
つまり、プロセスマイニングが、部門間にまたがるような業務プロセス(受注から入金までの「受注プロセス」、発注から支払いまでの「購買プロセス」など)における問題点を発見する“マクロ”な分析であるのに対し、タスクマイニングは、特定部門の担当者のPCの業務で完結する短い作業の問題点を発見する“ミクロ”な分析である、という違いが明確です。
言い換えると、タスクの集まりが業務プロセスと言えるので、タスクマイニングとプロセスマイニングでは問題発見箇所のレイヤーが異なるわけです。プロセスマイニングは、文字通りプロセス全体を俯瞰し、大まかな問題箇所を特定します。一方、タスクマイニングは、問題があるプロセスの特定箇所をタスクレベルにまで掘り下げて分析を行う、ということになります。
タスクマイニングとプロセスマイニングの使い分け
タスクマイニング、プロセスマイングとも、最大の目的は、業務改革・改善の取り組みを促進し、業務プロセスのスピードアップ、効率化、コストダウンを通じた業績拡大、利益率改善などに繋げることです
ただ、前項でご説明したように、タスクマイニングとプロセスマイニングは分析対象のレイヤーが異なります。したがって、両者とも業務改革・改善を目的としてうまく使い分け、また並行して採用したい分析手法であり、相互補完的なソリューションだと言えるでしょう。
そして、どちらもレイヤーは異なるものの、業務プロセスの効率化を目指しますが、タスクマイニングは主に「タスクレベルの自動化」、プロセスマイニングは「プロセスレベルの自動化」に繋げることを狙います。
このため、分析後の業務運用の改善では、タスクマイニングは主としてRPAの導入を図り、プロセスマイニングは、BPMシステムでワークフローを設定することで、プロセスの流れの自動化を図ることになります。(もちろん、タスクマイニングの結果として、ワークフロー設定によるプロセス自動化に、またプロセスマイニングの結果として、RPAによるタスク自動化に繋げることもあるため、厳密に分けているわけではありません)
プロセスマイニングからタスクマイニングへ
さて、タスクマイニングとプロセスマイニングの違いはおわかりいただけたとして、実際の業務改革・改善への適用の基本的な手順について説明しましょう。
理想的には、企業の様々な部門にまたがる業務プロセスの最適化を目指すべきでしょうから、まずは業務プロセスからイベントログを抽出して、プロセスマイニングを実行します。
プロセスマイニングで業務プロセス全体を可視化すると、非効率な業務、また業務が滞留しているボトルネック、繰り返し業務などが簡単に発見できます。しかし、なぜ当該業務が非効率なのか、なぜボトルネックが発生しているのか、なぜ繰り返しが多い業務なのか、という「根本原因」はプロセスマイニング分析の結果からだけでは読み取りにくいのです。
そこで、タスクマイニングの出番です。プロセスマイニングで特定できた非効率な業務、ボトルネック、繰り返し業務に着目し、PC操作ログデータ、すなわち「アトミック・アクティビティ」の分析を通じて、タスク遂行手順を可視化することで、従業員一人ひとり、あるいはチーム単位での問題点を把握するわけです。そうすれば、業務手順の見直し、要員配置計画修正、RPAによるタスク自動化などの具体的な改善施策の立案・実行を行うことが可能となります。
以上、タスクマイニングとは何か、またプロセスマイニングと対比させての両者の効果的な活用方法の基本を解説してまいりました。
ハートコア株式会社では、タスクマイニングツール、プロセスマイニングツールを用いた 分析ソリューションを展開しています。また、データの抽出から分析、プロセスの改善施策の提案までを支援する各種プロフェッショナルサービスも提供しています。
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