有名重工業社のプロセスマイニング成功事例(2)
~働き方改革・DXへの有効性~
もくじ
プロセスマイニングで解決できる具体的な問題と解決事例
―― 購買業務の改善例をご紹介いただきましたが、他にプロセスマイニングツールで解決できることには何があるのでしょうか?
三宅さん:部署や職種を問わずに大きくまとめると、主に4つに集約できます。
- 業務改革・働き方改革
- システム刷新
- 現行業務・システムの評価
- 業務改革後・システム刷新後の改善
某重化学企業に限らず多くの企業が悩んでいることだと思います。悩みが発生している理由は、DXなどの名のもとにシステム導入や業務改革をしたは良いものの、現状を正確にデジタルデータ化できていないことです。業務がデジタルデータになっていないのに各ツールを無理やり使おうとしてもちゃんと使えませんし、効果が出ているかも明確にはわかりません。
タスクマイニング*の要素も混ざってきますが、プロセスマイニングツールは業務の実態を可視化、データ化するものです。データ化できれば、たとえば業務改革の場合なら現状の正しい認識と施策が打てますし、施策でどのくらいの改善ができたかが数値で明確に出せます。
同様にして、とにかくERPやCRMといった新しいシステムを入れたがうまくいかないという悩みも解決できますし、現行業務がうまくいっているかという評価も可能です。そして、継続的に業務改善などをしていけるわけです。
※マイニングツールはERPやCRMなどのシステム操作を対象にするのに対し、“タスク"マイニングツールはエクセル操作やメール送信などが対象。業務改善はもちろん、RPA化やテレワークなどに効果があり、比較的安価。どちらが自社に適しているかなどはHeartCore社に無料問い合わせすると早く確実にわかるとのこと。―― 汎用性の高いツールなのですね。解決できることをより具体的に知っていきたいのですが、イメージ的には改善したいのに現状や原因があいまいになっているポイントを見える化し、解決策を打ち出せるということでしょうか?たとえばRPA化する業務の選定と最適化などです。
三宅さん:イメージ的にはそうですね。プロセスマイニングツールによる解決の具体例をあげていくとキリがなくなってしまいますが、主だったところをあげるなら、
- 業務効率のアップ
- 社員の配置最適化
- RPAや電子化
- スキルアップトレーニング
- マニュアル開発
- コンプライアンス研修
といったところでしょう。業務の把握があいまいになっている状況をきちんと可視化すれば、いろいろな場面で「ここが問題の元凶で、こうすれば解決できるのでは?」という考えられるようになります。
なお、今の日本企業が抱えがちな問題にプロセスマイニングツールを活用すると、以下6つの解決策に落ち着くケースが多いです。
最初に紹介した購買業務の自動化の事例は、上記6つの解決策のなかだと「自動化」や「標準化」に該当します。
―― プロセスマイニングで解決できる課題がわかってきました。幅広い悩みを解決されていると思いますが、なかでも最近よく寄せられる要望はありますか?
三宅さん:最近よく寄せられる要望を具体的にあげると、
- 業務全体の見える化
- RPA化すべき業務の抽出
- ボトルネック要因の特定
- 理想的なプロセスの発見
- 経費削減と削減効果の可視化
- リードタイムの短縮
などが多い傾向にあります。たとえば紙の帳票や稟議書の業務を分析し、RPAで自動化して業務量を50%削減したり、1日の業務を分析して営業部の売上をアップしたりといった具合です。
―― 営業部にも活用できるのですね。
三宅さん:営業にもプロセスマイニングツールは役立ちます。たとえばコア業務とノンコア業務の時間比率を具体的な数値として出し、効率の良い営業パーソンやトップセールスのやり方を特定して広めるなどです。成果としては20%の売上アップなどがあげられます。
先の今国内企業が抱えがちな問題に対する6つの解決策のなかでいえば標準化にあたる成功事例です。売上を数値化していない企業はないでしょうが、トップセールスの活動を数値化している企業は決して多くありません。数値化しないと具体的にどこがどう優れているから売上につながっているということが見えず、具体的にどこを改善するかという意識すら持てないわけです。
PCログ取得は嫌がられるかと思いきや、現場からは感謝の声が
―― 業務や経営的な視点からの話題が続きましたが、某重工業企業の社員さんからの評判はどうだったのでしょうか?
三宅さん:感謝の声をいただきました。特に普段から非効率だと思いながらも業務の変革はできない社員さんから多くいただきました。
―― 業務の改善が成功した強い裏付けですね。しかしPC作業のログを取られるとなると、嫌がられそうな気もしますが…?
三宅さん:がんばって働いている社員さんほど、PCログの取得を嫌がらない傾向にあるようです。彼らのストレスは業務の無駄な部分に労力がとられることですから。仮に改善の打診をしても実現しづらいのが実情です。プロセスマイニングツールでそのストレスがなくなったので感謝されたというわけです。
当たり前ですが、生産性以外にもエンゲージメントや上司との信頼関係なども好転しました。エンゲージメントが高い社員さんが増えて仕事ぶりが上がれば顧客満足度も上がります。さらに離職率も下がるので、各社員から感謝の声があがるということは、企業全体に大きなメリットがあるといえます。
―― 逆にいうと海外や外資企業はプロセスマイニングをやっているわけですから、国内企業もやらないと危険なのでしょうか?
三宅さん:危険といえるでしょう。実際、外資系企業に優秀な従業員をとられるといったことが発生しています。
たとえば国内企業だと、いわゆるレガシーシステムを使ったり各部署でバラバラのシステムを使ったりしているために無駄な時間が多く発生して、優秀な社員に嫌がられているケースも多いです。
欧米の企業ではこういった無駄はありません。日本に進出している欧米企業にも無駄に手がとまる時間や過剰な承認プロセスなどはないわけです。多くの業界の企業が、がんばって働いてくれている社員をとられてしまうリスクを抱えています。プロセスマイニングツールを使って社員に感謝されたということは、外資系企業に社員をとられるリスクや生産性で大きく負けていた状況を打破できたということです。