【プロセスマイニング道場】イベントログってなんですか?
継続的プロセス改善のため、様々な企業での活用が始まった「プロセスマイニング」。プロセスマイニングは、データマイニングのいわば「兄弟」のような分析手法であり、どちらもビッグデータを分析対象とする点は一緒です。ただし、プロセスマイニングは文字通り「プロセス」のデータに絞った分析を行う点が異なります。
このプロセスに関するデータが「イベントログ」です。ERP、SFAなどのシステム・アプリケーションを担当者が操作して、なんらかの業務プロセスを遂行する際、その操作内容(活動:業務)は、「トランザクションデータ」やDBの「変更履歴データ」として詳細に記録されています。一般に、こうしたデータを総称して「イベントログ」と呼んでいます。
今回は、「イベントログ」とはなんなのか、ベタな例え話で解説いたします。
さて、今年30歳になる真伊院紅男(まいいん・べにお)さんは、ほぼ毎週末、車で1時間ほどの場所に一人で暮らす母親のところに帰っています。親孝行な紅男さん、年に30−40回ほども「プチ里帰り」をしていることになります。
この「プチ里帰り」をイベントログ(活動の履歴) として記録しているという前提で、以下ご説明いたします。
プチ里帰りは、紅男さんが自宅を出ることが起点、実家への到着が終点です。こうした、なんらかの目的のために行われる、同じ起点と終点を持つ一連のプロセスのことを「ログ(log)」と言います。
紅男さんは、このログを年に30-40回繰り返しているわけですが、いつもまっすぐ実家に向かうわけでなく、ランチを取ったり、コンビニに寄ったりしてから行きます。毎回、プロセスが違うわけです。
こうして、繰り返される各回のログのことは「案件(case)」と呼びます。つまり、プロセスマイニング的に説明すると、紅男さんは、毎年、「プチ里帰り」というログを30-40案件こなしているということになります。
さて、紅男さんのプチ里帰りには、前述したように、家を出る、レストランに入る、ランチを取る、コンビニに寄る、などの「活動(Activity)」が含まれます。
プロセスマイニングでは、こうした様々な活動がどのような順序で、どの程度の時間を使って行われているかを分析することが主眼となっています。(ちなみに、「イベント(Event)」と「活動(Activity)」は、プロセスマイニングでは同じ意味で使われます。)
では、イベントログを意味する、「ログ」、「案件」、「活動」の関係性を下図で説明いたします。
まず再確認ですが、「ログ」は、なんらかの目的のために、同じ起点と終点を持つプロセスのことです。同じ「ログ」が何回も繰り返される時、各回のことを「案件」と呼びます。そして、それぞれの案件には、時系列で流れる複数の「活動」が含まれるという点をしっかり理解しておいてください。
紅男さんの場合、母親の住む実家に帰るという目的のための自宅出発(起点)と、実家到着(終点)という「プチ里帰り」がログです。
ログの中に、紅男さんがプチ里帰りした最近の「案件」が4つ示されています。それぞれの案件の中の「活動」を見ると、毎回微妙に異なりますね。ランチはだいたいガストですが、サイゼリヤにも行くようです。また、コンビニはファミマだけでなく、ローソンにも立ち寄っていますが、立ち寄らない時もある。ユニクロにもだいたい道草していますね。
さて、紅男さんのプチ里帰りのログについて、50案件、100案件分析したとしたらどうでしょう。たとえば、紅男さんのプチ里帰りの「典型的パターン」(自宅出発→ガストランチ→ファミマ立寄→ユニクロ立寄→実家到着でしょうか?)が明確になりますし、また、プチ里帰りパターンは何種類存在するかといったことが、たちどころにわかります。
最後に、紅男さんのプチ里帰りをビジネスシーンに置き換えてみましょう。
たとえば、「請求書処理」は、請求書への支払いを目的として、請求書の受領(起点)から、振込完了(終点)を持つログであり、システム内にはトランザクションデータやDBの変更履歴として記録されています。
この請求書処理というログについて、A社からのX製品についての請求書、B社からのY製品についての請求書といったように、一つひとつの請求書が「案件」です。請求書処理は、基本的に請求書単位で行われるからです。
そして、一つひとつの請求書処理案件には、「OCR読み込み」、「経理システム入力」、「内容チェック」、「支払い設定」、「支払い」などの活動が含まれます。
プロセスマイニングのビジネス応用では、大企業であれば年間数千〜数万件以上に達する大量の請求書処理に関する「イベントログデータ(トランザクションデータ)」の分析から、典型的な請求書処理パターンや、逸脱したパターン、ボトルネックなどを発見して行くわけです。