【プロセスマイニング道場】プロセスモデルのきほん:頻度分析
プロセスマイニングのコンサルタント、真伊院紅男(まいいん ・べにお)くんの部署に、26歳の若手社員が新たに配属されました。「今流行りのプロセスマイニングをやりたい」、という本人の強い要望を受けて異動となったのです。
教育係を拝命した紅男くんは、初めての部下となる若手社員、波亜戸芯(はあと・しん)くんをどう育て上げようかといろいろ思案中です。
紅男くん:波亜戸さん、これからよろしくね。というか、みんな芯くんと下の名前で呼んでるから、私も芯くんと呼ぶよ。
芯くん :はい、真伊院先輩、こちらこそよろしくお願いします。
紅男くん:私のことは紅男さんでいいよ。真伊院ってよびにくいでしょ。
芯くん :承知しました、紅男さん。
紅男くん:それで、芯くんはプロセスマイニングのことをどの程度知ってるの?
芯くん :いろいろ資料読みましたけど、実際のツールとか見たことなくてなんか腹落ちしないです。
紅男くん:まあ、だいたいお客様もそう言われることが多いね。では、理論的なところは自習してもらうとして、myInvenioの画面の見方や、操作方法などを実際説明しながら理解してもらうことにするね。
芯くん :それは助かります!よろしくお願いします。
紅男くん:じゃあ、まず今日は、「プロセスモデル」がどんなものかを説明しよう。プロセスマイニングは、ERPやSFA、CRMなどのシステムに記録されている操作ログ、すなわち「イベントログ」のデータを分析することで、業務プロセスを可視化することが出発点だというのはわかってるね。
芯くん :はい、頭では理解してます・・・(笑
紅男くん:じゃあ早速、myInvenioの画面を見よう。イベントログデータを取り込んだら、まずプロセスモデル化を実行するんだ。ほら、これがプロセスモデルの画面だ。
芯くん :フローチャートですね。
紅男くん:イベントログから、目に見えなかった業務プロセスを「モデル」として表示しているからプロセスモデルと呼ぶけど、要するにフローチャートだね。このように「プロセスモデル」として可視化すると、プロセスにはどのような活動(タスク)が含まれ、それがどのような順番で流れているのかが一目瞭然だね。
ちなみに、このプロセスモデルは、Credem銀行という大手銀行の実際の銀行ローンの処理プロセスのリアルデータなんだよ。元データの表記はもちろん英語だけど、日本語に翻訳してある。
芯くん :この銀行ローン処理プロセスの起点は「ローン申請受付」ですね。融資本部が、住宅ローンとか、学資ローンとかの申請を一括で受け付けているのでしょうか。
紅男くん:そういうことだね。そして、ローン申請受付後は、プロセスがいくつか並行して走ることがわかる。拡大して見てみようか。
紅男くん:この拡大部分だと、「ローン申請受付」の活動後、「サイン証明書取得(公証人役場)」、と「不動産鑑定(融資本部)」、および「契約書承認(業務)」の3つの活動へと分かれているね。
これらは、ローン審査のために事前に必要な活動だ。「サイン証明取得」は、日本でいう「印鑑証明」を取ることだし、担保物件としての不動産の価値を鑑定すること、また、ローンの契約書の取り交わしが並行して行われなければならない。
芯くん :こうしてフローチャートで可視化されるとほんとわかりやすいですね。箱の中とか、線の上にある数字はなんですか?
紅男くん:それは処理件数を表している。myInvenioのデフォルトのプロセスモデルは、頻度(frequency)ベースで表示されるんだよ。専門的には「頻度分析(Frequency Analysis)」という。覚えときましょう。
それで、ローン申請受付の箱を見ると5700件だ。これはCredem銀行が2014年11月から2015年10月までの1年分のローンの受付件数合計だよ。ちなみに、箱の色が濃いほど、その活動の処理件数が多いことを意味している。
また、ある活動の箱から、別の活動につながる線の上の数字は、どれだけ件数が流れたかを示している。たとえば、ローン申請受付から、契約書承認につながる線の上には、1277(901)とある。かっこ内の901は案件件数、1277は処理件数だ。
案件というのは、ローン申請件数のことで、ローンを申請した顧客数と基本的には等しい。一方、銀行内の1277は処理件数だ。ちょっとわかりにくいかもしれないけど、申請件数よりも、処理件数が大きいのは、同じ人のローン申請に対して同じ処理が繰り返し行われたことを意味する。もし、ローン申請受付から契約書承認まですんなり1回で済んでいたら、この数字は901(901)となっただろう。しかし、現実には、差し戻しが起きることが多いので、同じ案件に対する繰り返し業務(Rework)が発生してしまった結果が、1277(901)ということだね。なお、この活動と活動をつなぐ線も、太いものほど流れた件数が多いということを意味している。
芯くん :なるほど。そういうことですね。説明してもらった今この瞬間は理解できてますが、明日には忘れてしまってるかも…ってすいません!
紅男くん:まあ、最初はそんなもんだ。じゃ、今日はこのくらいにして異動祝いで飲みに行くか!
芯くん :はーい、お供しま〜す!