生産性を上げ、イノベーションにつなぐ! 止まらないロボット「ハートコアロボ」
―― キーパーソンインタビュー RPA事業本部 本部長 三宅立悟(前編)
RPAが導入効果を発揮するためには、RPAが注目されている背景や注目理由を、現場や担当部門だけでなく経営トップにもご理解いただくことが重要です。
そこで、専門家でなくても理解できるようわかりやすい解説をお願いしました。
働き方改革を旗印に、生産性向上を迫られる日本企業
―― そもそもRPAとはどのようなものでしょうか?
最近、RPAという名前を耳にする機会が増えたと思いますが、内容まで理解されている人はまだ少ないのかも知れませんね。RPAは、簡単に言うと「決まった手順の仕事を人間に代わってやってくれるアシスタント」だとお考えください。ちなみに、RPAはRobotic Process Automationのことで、ロボットにより業務(プロセス)を自動化するものの総称です。
ハートコアでは、「ハートコアロボ」というRPA製品を扱っています。「ロボット」と呼んでいますが、ソフトウェアロボットなのでもちろん人間の姿はしていませんし、今のところおしゃべりもしません。前述したように、PCやスマートフォン内で働く、目に見えない「仮想アシスタント」なのです。
なぜいまRPAなのですか?
―― なぜいまRPAなのですか?
それはRPAが、働き方改革が必要とされている今の日本企業のニーズに、ぴったり合っているからなのです。働き方改革が目指しているのは、最終的には企業がイノベーションを起こしやすくするための環境づくりです。
実は、働き方改革にとって大きなハードルとなる付加価値の低い仕事こそが定型業務である場合が多いのです。定型業務の多くは「正確に、そして速くできること」が求められ、それをこなしたからといって高い評価にはつながりません。それをロボットに肩代わりしてもらい、労働時間の短縮と付加価値の高い仕事への集中を促すというのがRPAの狙いです。
しかも、定型業務の低減は、社員の「もっと評価される仕事をしたい」という願望をかなえるきっかけになり、モチベーションアップによって「活躍する社員」を増やします。その結果、社員満足度や定着度が向上し、技術やノウハウの流出リスクが減るとともに、勤めたくなる会社として新たな人材も確保しやすくなります。そして、もちろん残業と経費を減らすことにも直結し、利益率の改善も期待できるのです。
―― 具体的に効果が出た例について教えてください。
定型業務にRPAを導入すると、多くの場合劇的な効果を生みます。
例えば、営業社員のテレアポリスト作成のケースでは、ネットで情報収集しリストを作成するという手順に毎月約7.5時間かかっていました。このプロセスをロボットにやらせると約30分で済みます。7.5時間が0.5時間になったということは15分の1に時間短縮され、削減効果は90%ということになります。これを人件費換算し年間に置き換えるとその効果の大きさが実感できるでしょう。
こうした事例はまだまだたくさんあります。
RPAの2つの課題。ハートコアロボはどのように克服したのか?
―― RPAの利便性がわかりました。もっと普及してもいいように思いますが……
ここまでお話ししたことは、RPAがうまく機能することが前提となっています。2~3年前にもRPAが話題になった時期がありました。でも、その当時のRPAは技術的な課題を抱えており、今でもそうした欠点を克服できていないものが数多く存在します。
課題は大きく二つあります。一つは、動作が途中で止まってしまいがちになること、もう一つは動作環境の制限です。
―― 動作が途中で止まってしまうと困りますね。どうしてそのようなことが起こるのでしょうか?
RPAは基本的にPCなどで行う作業を、同じ手順でロボットが代行するものです。人間がマウスでクリックしたり、文字入力したり、コピー・ペーストしたりという一連の動作を記録し、それを手順としてロボットに再現させています。
例として、定期代精算のプロセスをRPA化する場合を考えてみましょう。
社員300人分の自己申告による発着駅と運賃が記載されたエクセルのシートを想像してみてください。
ここでしたいことは最安の運賃となる経路で定期代を確定するという作業です。その場合、RPAで行う作業は、発着駅の欄を読み取って乗換案内サイトで最適な経路と運賃を割り出し、申告内容と比較し同じなら確定、申告よりも安ければ候補となる路線と運賃を別の欄に記入する、という手順だとします。
それをロボットに覚えさせるとすると、単純にシート内の文字を認識するだけではなく、その内容をもとに自らブラウザを立ち上げ、乗り換え案内サイトで検索し、その結果をシートに反映させる必要があります。その際、マウスクリックすべき位置を特定するための座標認識や、アイコンの形状で動作を柔軟に変化させるための画像認識など、さまざまな「認識技術」が必要になります。
例えば、その画像認識の方法が、最初に覚えたときとまったく同じ画像でなければ不一致と捉えて動作を停止してしまう、となったらどうでしょうか?最近増えている動的なサイトは、そこに行くたびに画像などが変化することがあるため、こうしたつまずきが起こりやすくプロセスが止まってしまいます。しかし、たびたび止まっていてはRPAのメリットが失われてしまうのです。
―― ハートコアロボではどうなのでしょうか?
ハートコアロボは今年3月に当社が販売を開始したばかりの後発組です。その分、むしろ既存RPA製品の弱点を克服できています。
とりわけ操作対象の認識の多様さが強みです。画像認識の精度が高いだけでなく、画像に若干の違いがあったとしても同じものと見なすファジーさ(許容の程度はユーザーが指定可能)も兼ね備えているため、実用的な確度の範囲で止まらないシステムになっているのです。
たとえば、社員が帰宅した後のPCの空き時間を利用してロボットに仕事をさせたとして、翌朝に様子を見たら止まっていてがっかり、といったことが起こりにくいのです。
―― ハートコアロボは止まらない!のですね。
先ほど出たもう一つの課題、動作環境の制限についても教えてください。
平たくいうと、他のツールの場合、Windowsでしか動かずMacではだめ、使用できるブラウザにも大きく制限があり、スマートフォンでは動作しないといった「ないないづくし」のことが多いのに対して、ハートコアロボでは、マルチプラットフォーム、マルチデバイス対応、つまり環境を気にせず利用できるということです。
また、遠隔操作が可能であることもハートコアロボの利点のひとつです。他のシステムからロボットを起動させ、そのロボットが作業を終えたら別のシステムを起動させるということによって、作業の受け渡しあるいは複数の作業の連携といった高度な業務アシストも可能になっています。
用途に合わせ、さまざまなソリューションを提供
―― ロボットの開発で、大変だったことは何ですか?
ハートコアロボの開発は、ロボットに「仕事を教え込む」ということが基本の作業ですが、重要なのは、開発に当たって、業務内容をよく理解して、例えば、例外処理をどうするかなど、実務に即したプロセスの分析・設計がきちんとできていることです。
したがって、「開発」という言葉を使うとどうしても技術者向けだと捉えられがちですが、RPAの場合は現場をよく知るスタッフの参画がより良いロボットづくりに効果的だと言えます。
自社スタッフのリソースが潤沢なら、業務分析・設計から、ロボット開発、運用管理まで自己完結できるはずですが、中にはあらかじめ最適化したロボットを貸し出してほしいといったご要望もあります。
当社では、業務分析などを踏まえたロボット導入支援、技術者向け開発サポートの他、RPAに手が回るだけの技術スタッフがいない企業のために、「ロボBPO(正式名称:HeartCore DesktopロボBPO)」というソリューションも提供しています。
―― ロボBPOとはどのようなものでしょうか?
ロボBPO(Business Process Outsourcing)は、業務のアウトソーシングを想像してみてください。当社が作成・管理・運用するロボットがアウトソーシングを担います。
ロボBPOではロボットが業務をこなすため、すばやく正確で長時間働いても疲労がなく、しかも人件費よりも安くできる場合がほとんどです。とりわけ事務量の多い作業の場合、納期が大幅に短縮できるケースがあります。
このように、当社ではロボットの開発からアウトソーシングまで、用途に合わせた柔軟な対応と料金体系を用意しています。
―― RPAの大体のイメージがつかめてきました。
実は今回お話したことはRPAの可能性の一部分です。どんな仕事がRPA化できるか、組織としてどう対応していくのか、削減効果や業務の可視化の手だてはどのように整っているか。まだまだお伝えしたいことがたくさんあります。それだけRPAには可能性があるのです。
今後セミナーやワークショップなどさまざまな形で、RPAやハートコアロボの魅力をお伝えしていきたいと思います。
―― ありがとうございました。