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イベント
2018.12.14

トレンドをつかんでチャンスに変えよう!
――HeartCoreDAY2018 オープニングキーノート概要
『最先端技術を使いこなすために、マーケターが押さえておくべき重要トレンドとスキルセットとは』

2018年11月、ハートコアは、多様なセッションを通じてビジネス・マーケティングの未来を見通し、備えを促すという趣旨のもと、HeartCoreDAY2018を開催しました。

その中から、江端浩人事務所代表 江端浩人氏のオープニングキーノートの概要をご紹介します。

江端浩人氏

マーケターが捉えておくべき5つのトレンド

2025年、東京オリンピックが終わって5年を経たあたりに向け、マーケターが捉えておくべきトレンド5つについて、お話ししたいと思います。

重要な5つのトレンド
図1. 重要な5つのトレンド

重要なトレンドは図1.に示した5点です。それについて順に説明します。

海外比率の増加

海外からの観光客は増えており、2020年の東京オリンピックイヤーには4000万人が日本にやってくると言われています。そしてその流れはオリンピック後も続くでしょう。ここに大きなチャンスがあるはずです。

また、ECなどを含む、グローバルを見据えた製品・サービス展開も増えてきています。日本市場がその一部として位置づけられるようになると、日本国内から見て、海外比率が増加するでしょう。
もともとBtoBでは世界市場が基本ですし、BtoCにおいても、世界に通用するブランドしか生き残れなくなるかも知れません。

社会課題の重要性

多様性、包摂性が求められる昨今、SDGs(持続可能な開発目標)という社会全体のゴールが設定されているような状況で、社会的な意義や課題を持たないブランドは支持されなくなるでしょう。

また、ブランドアクティビズムと呼ばれる流れにも着目しておきましょう。これは、環境、政治、法律、ビジネス、社会、経済などにおいて、そのブランドがどのようなスタンスを取るのかを表明することを指します。
例えば、NIKEは人種差別に反対するというスタンスを取っており、Equality has no boundaries (平等に境界はない)といった政治色の強い広告キャンペーンを米国の中間選挙前に行い成功しています。社会活動にどう取り組み、それをマーケティングにどう活用していくのかという視点が求められています。

働き方、学び方の多様化

少子高齢化時代において、日本は課題先進国と言われています。そうした中、来年4月から順次働き方関連法案が施行されます。残業規制や非正規雇用者の保護などの他、働き手が不足している状況の下、育児や介護をしながら働ける環境を整備してゆくことも重要です。

また、ひとりひとりが元気で働ける期間が長くなってくるという時代に合わせ、定年を延長し、一億総活躍社会を目指した動きが高まってきています。働き方も、一つの会社にのみ所属する、あるいは本業と副業をもつといった従来的なあり方だけでなく、いろいろな仕事を一人の人が同時にできる「複業」の機会が広がりつつあります。

時代の変化に合わせた職業上のスキルを獲得するために、学びの手段も多様化しています。オンラインでの教育の広がりもそうですし、専門職大学、専門職大学院など新しいキャリア構築を支援する教育機関もできています。

スポーツの重要性

高齢化によって、健康でいられる時期をなるべく長くすることが社会課題になっています。また、今後はIoTやAIの浸透によって可処分時間が増えてくると考えられます。
これらのことから、スポーツの需要は今後ますます高まるでしょう。経験することで、スポーツへの関心が高まり、観戦などもより盛んになってきています。
また、e-Sportと呼ばれるビデオゲームによる競技は、誰もが参加できる“平等”の理念をベースとして拡大することが予想されています。

テクノロジーに囲まれた現代にあって、スポーツは何よりも人間的で、人間にしかできない活動の典型といえます。同時に、スポーツビジネス界にもデジタル化による変革の波が打ち寄せてきています。
その一つが、Uber等でも使われているダイナミックプライシングです。競技場の座席の価格を、人気のあるものでは高く、人気のないものでは安くして、トータルの効率を上げるという手法で、アメリカでは実用化が進んでいます。

技術のトレンドとその本質

デジタルトレンドについては、私自身の考えに基づいた、マーケティングに結びつく本質について、お話ししたいと思います(図2)。

技術トレンドの本質
図2. 技術トレンドの本質

まず、IoTの重要な機能は可視化であると考えています。いろいろなセンサーによって、それまで見えなかった人のさまざまな動きが見えてくるようになる。そして、それらをデータとして取り込み、分析することで、さらに色んなことが見えてきます。
同様のことがSNSにおいてもいえるでしょう。例えば、「アタマにきたなう」というように、考えが文字などで表現されることで可視化されます。

AIの本質は効率化です。AIは、人間が何年かかってもできないような計算や、何時間もかかる作業をあっという間にこなしてしまいます。活用が進んでいる医療の画像解析などでは、人間だと見逃しがちなちょっとした違いを見つけて、病気の進行などを発見することができます。
AIはより高い精度、より早い時間で作業を行い、人間をこうした仕事から解放し、人にしかできないことに、より時間を割くことを促してくれます。

AR/VRについては、時間と距離を縮めるツールであるというのが本質だと考えます。
自分が行けないところに行くことで距離を縮めたり、あるいは将来こういうものができるかも知れない、という体験をして、今と将来の時間を埋めたりすることができます。例えば、VRによる遠隔医療によって、医療の力がより引き出せるのです。

そして、スマートスピーカーなどによる音声認識ですが、これはアメリカを中心としたホットトピックです。
家庭内の機器のコントロール、例えばガレージの開け閉めなどは音声認識と相性がいいのです。

それからモニタリング。Airbnbなどで、貸した部屋で何か物が壊されたりしていないかを検知する、という使い方もできます。
AmazonやGoogleは今この分野に大量の資金と人材を投入して研究開発を進めています。

求められるマーケターの要件

以上のようなトレンドを踏まえ、マーケターに求められている要件を4つ上げておきたいと思います。それは、

  • 新技術やサービスをいち早く使ってみること
  • 実験用の予算を持つこと
  • 正解に導くシナリオを作り、迷ったら両方やってみること
  • 経営者の視点を持つこと

です。

マーケターは一歩先の技術に親しみ、世の中に半歩先の提案を取り入れていく存在です。

食料品宅配サービスのUber Eats、オンライン上での投げ銭という新しい体験を提供するSHOWROOM、ショート音楽動画コミュニティーのTikTokなど、新しいサービスをいち早く使い、それが世の中にどのような影響を与えるかを考えるべきです。
そうした新しいサービスとのタイアップなども、2番目となると忘れられがちです。すぐに試す、ということが重要です。

破壊的なテクノロジーやサービスによって、新しいチャンスは急にやってくるものです。そして、その新たなチャンスをつかむには、前例のないものを試してみなければどんなことが得られるのか実証できないことも多いのです。
そのために、大きく投資をする前に、実験用の予算を確保して試してみることができれば、間違いも少なくて済みます。

チャンスをどう取り入れて施策につなげていくか、そのための仮説作りはデータやツールがあれば可能です。しかし、そこで得られた仮説が正解であるかどうかは誰にもわかりません。
結論が出せなければ、両方やってみるべきだ、と私は思います。チャンスをつかむためにはスピードが大事です。

マーケティングの与える影響力は、ますます大きくなっています。マーケティングそのものがビジネスモデルであるというサービスや商品がたくさん出てくる可能性があります。業界によっては、自らディスラプションを仕掛けてゆく必要も生じるでしょう。

変わりつつある顧客や市場のあり方をいち早く見抜いて、企業の中に伝えていくためには、経営者の視点を持つことも、これからのマーケターの重要な要件だと考えています。

講演者プロフィール

江端浩人事務所 代表 江端浩人氏

米ニューヨーク・マンハッタン生まれ。米スタンフォード大学経営大学院修了、経営学修士(MBA)取得。
伊藤忠商事の宇宙・情報部門、ITベンチャーの創業を経て、2005年より日本コカ・コーラでiマーケティングバイスプレジデント。2012年9月より日本マイクロソフト業務執行役員セントラルマーケティング本部長。
現在は江端浩人事務所の代表、エバーパークLLC代表、事業構想大学院大学教授として、さらに株式会社MERY、スポーツニッポン株式会社、株式会社オープンエイトVideo Brainなどのアドバイザーとして各種企業のデジタルトランスフォーメーションやデジタルマーケティング人材の育成に尽力している。

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